フィルムの選択
<数多くの選択肢と取捨>
1.確実性、2.粒状性/諧調、3.発色・・・この3要素が全て成り立てば良いが、
実際にはこの中から取捨を迫られる。
数あるフィルム全てを紹介することは不可能なので、
上記3項目毎に最も適したフィルムを考察してみよう。
これは私なりの考えなので、各自の好みや予算で自由にチョイスしよう。
1.確実性
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「ほーら、オーロラの写真撮れたぞーっ!」
実際に見たオーロラの写真を家族や友人に自慢したい。
写真関係に明るくなければ、撮れた喜びはなおさら大きい。
そんな方を、危ない橋に渡す訳にはいかない。
まず、ごく一般に使われているネガフィルムを使う。
なぜネガを使うかというと、フィルムのラチチュードが大きいからである。
ラチチュードとは、露出の許容範囲のこと。
例えば、15秒のシャッターを切らないといけないフィルムがある。
しかし間違えて60秒のシャッターを切ってしまった。
ラチチュードが広ければ救われるが、狭ければ致命的だ。
許容範囲が大きければ、多少のミスは印画紙に焼く時に補正できるのだ。
まあ早い話、間違えた露出で撮っても救われる確率と言ってもいいだろう。
ネガフィルムとは、現像してもフィルムが薄茶色なので色が分からなく、
そう、キヨスクやコンビニで普通に売ってるフィルム。
使い捨てカメラなんかにも入っています。
最もお薦めなのは富士フィルムのスーペリア800です。
感度が高いのでレンズを選ばず、発色もまずまず。
1600もあるけど、高感度過ぎてガサガサの出来栄えになるので勧めない。
高感度は露光(シャッターの開いている)時間が短いのが最大のメリット。
もしオーロラを数日に渡って見ることが出来たなら、
後半は同じ富士フィルムのスーペリア400で撮ってみよう。
粒子が800より細かく、微妙な諧調まで再現できるであろう。
でもビギナーは、まず800を1本確実に撮ってから。
後半の初心者必勝法も見て下さいね。
2.粒状性/諧調
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粒状性と諧調はリンクしている。
粒状性が良ければ諧調も自然に良くなる。
粒状性をある程度保つには、感度は400までに限定。
微妙な光を拾いにくい感度100以下は上級者向け。
ネガを使う人には富士フィルムのスーペリア400を。
ある程度の確実性を兼ねているので、使いやすいフィルムだ。
ここから先は写真関係にかなり明るい方向け。
スライド用フィルム、つまりポジで撮るしかない。
ポジはラチチュードがかなり狭いので、
ある程度は使い慣れていないと失敗する。
しかし、夜間の露光なので多少の露出誤差は救われる。
最もお薦めなのはフジのプロビア400である。
夜景はもちろん、オーロラを撮るにはもってこいのフィルムだ。
特に現行品のRHPVは、粒状性が非常に良く、
ISO100顔負けのスーパーフィルムである。
また非常にニュートラルであり、正確な色再現性をもたらす。
初心者の方でも長期滞在で、充分ネガで撮影したのなら、
試しに24枚撮りでも1本撮ってみる価値はある。
3.発色
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人それぞれ写真という哲学には、考え方や方向性が異なる。
ヘソが曲がっていなければ、前述のRHPVを使えばいい。
しかし、さらなる発色を極めたい諸君は読んで欲しい。
まず、色々なオーロラの写真を見てみる。
ほとんどが緑が主体の発色だ。
しかーし、赤や紫やピンクのオーロラを収めてみたいという欲望がある。
そこで、考えたのがコダックのダイナ・ハイカラーEBXを使うこと。
ハイカラーという文字通り、発色はズバ抜けている。
赤や紫がかなりエンハンス(強調)されるので、
規則正しい発色傾向とは言えないが、
出来栄えという結果論を重視するなら是非この1本。
感度100しか発売されていないので、400まで2段増感して使う。
増感した分、粒状性は落ちるが、マゼンダ傾向のド派手な発色を楽しめる。
邪道と言われ様と、オーロラの色出しについてはEBXは王道だ。
数本撮ったなら、1本だけ現像してみて、
それを見てから残りを増感の段数で微調整しよう。
総総括括
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感度100を含む低感度フィルムは、粒状性が良く、
美しくきめ細かな仕上がりが期待できる。
しかし、低感度ではオーロラの激しい部分ならともかく、
淡い光までは拾いにくいのである。
どうしても感度100なら、F1.4の広角で攻めたい。
感度800などの高感度フィルムは粒状性は粗いが、
露光時間が短く、効率の良い撮影が可能である。
しかし、コントラスト(明暗差)が高い為に、
オーロラの微妙な諧調表現が難しいのである。
中間をとって、ISO400で使うのが最も無難と考える。
まずまずの粒子と諧調表現を併せ持つからである。
その他、ハッセルやマミヤ等の中判を使うという手もある。
当然、フィルムの面積が大きいので粒状性は格段に良くなる。
しかし、50mmレンズ等の広角では、
いいところF4、せいぜいF3.5が関の山である。
残念ながら広角の明るいレンズが存在しないばかりか、
レンズからフィルム面まで遠いのも好ましくない。