EOS5D改造レポート

  フルサイズCCD搭載のEOS5Dはカールツァイスレンズの性能を発揮するのに不足は無い。マウントアダプターを介してY/Cマウントのツァイスレンズを装着して撮影すると、まさに鬼に金棒。ところが、フルサイズCCDだけにミラーが大きく、一部のツァイスレンズにミラーが干渉して使えない泣き所がある。しかし、ミラーをほんの少しだけ削ればどのY/Cマウント用ツァイスレンズでも使えるのである。今回、エレフォト製のマウントアダプターを使用する前提でミラーを削る過程をレポートした。このレポートはあくまで参考ということでご覧下さい。この改造による機材の破損等について一切の責任を負うものではありません。改造行為はあくまでも自己責任でお願い致します。

  さて、心の準備は宜しいでしょうか。余程のことをしなければEOSが壊れることはないと思います。ただ、削った粉末がファインダーやフランジボックスに入らないよう、細心の注意が必要です。実用に差し支えませんが、特にファインダーにゴミが入りやすいです。いかに上手にマスキングするかがポイント。用意するものは、エレフォト製マウントアダプター、金ヤスリ、エアーダスター、厚紙、テスト用テッサー45mm、セロテープです。その他、ホワイトの油性マーカーと定規があるとマーキングに便利です。

    

  まず、ミラーの中心を定め、そこから左右10mmのところにマーキングします。この例では油性のホワイトマーカーを使いました。この左右合計した20mmを削りますが、円弧を描くように削るので、中央が一番削られます。ただ、最も削られる中央でも約0.5mm程度です。1mmは削り過ぎだとイメージして下さい。

   

  次に、厚紙をキッチリ39mmの幅に切ります。定規で罫書きしてからキレイに切りましょう。キレイに切らないとミラーを削ったチリがEOS内部に入ります。

  

 39mmに切った厚紙を、こんどは上から30mm,38mm,30mmに罫書きを入れます。

 

 罫書いたところを画像のように上から山折り、谷折りにします。そして末尾に約5mmの軽い山折りを作ります。

 

 

 さきほど作った厚紙を、ミラーの上に入れます。最上部はセロテープで固定して下さい。

 

 新たに39mmの幅の厚紙を用意します。上の画像の赤丸のように、幅2mm,長さ15mmを切り落とします。おおまかでいいので罫書く必用はありません。

 

 ここからは正確に上の画像のように罫書きしてから折って下さい。

 

 消しゴムを2つカットします。カスの出にくいプラスチック消しゴムが良好です。天地は正確に16mm、幅はおおまか10mmに切ります。写真に写っているトンボの消しゴムは、最初から天地16mmなので推奨です。

 

 さきほどの厚紙のカットしてある先端を、ミラーとハーフミラーの間に差し込み、上の写真のようにテープで固定します。そして、作業がしやすいよう、カットしておいた消しゴムをミラーの下に噛ませます。分かりやすいように消しゴムに斜線を入れました。

 

 さて、このような状態になったでしょうか。ミラーに付けた白いマーキングを消しゴムが干渉しないようにして下さい。消しゴムを入れるメリットは、ミラーが上がっていて作業がしやすいことと、ミラーをヤスリで削る時の緩衝材になります。

 

 これからこのようなイメージで削ってゆきますが、その前にマスキングをします。

 

 5mmだけ折り返した部分とミラーをテープでマスキングし、チリがミラーに堆積しないようにします。素手で上手くできない時は、ピンセットを使うと上手にできます。マスキングはこれで完璧というではありません。他に良い方法や工夫があればどうぞ。

 

 色々やってみましたが、平ヤスリがいいようです。前にも書いた通り、ミラーの真中が最も削られるよう、ミラーが弧を描くように削ります。短期を起こして削り過ぎないように。最も削る中心で0.5mm程度です。削った時に出るゴミは消しゴムの間に入るようにします。消しゴムのクッションを上手に利用し、ミラーに大きく負荷をかけないようにしましょう。下の樹脂よりミラーのほうが硬いので、ミラーを少し削ってから土台の樹脂を削ると効率いいです。

 

 削り終わった様子です。中心から左右10mmだけ削っています。

 

 ほんの僅かですが、円弧を描くようなイメージで削られたのが分かりますでしょうか。ミラー中心を頂点に弧を描いています。このあと、念入りにエアーでゴミを除去して下さい。この時、シャッター幕を強い空気圧で傷めないよう、加減して下さい。

 

 アダプター使用での強敵、テッサーを付けてのテスト。これが通れば何でも通る。レンズとミラーを傷めないように、最初は最短にセットしてからシャッターを切ってみる。徐々に無限に近づけ、無限でシャッターが切れればテストクリア。

 

 次にマクロプラナー100mmなどの俗に言う”八重歯”が出ているレンズでテスト。プラナー100mm、プラナー135mm、ゾナー180mm、テレ・テッサー300mm、アポゾ200mmなど、何でもOKです。

 

 最後にお持ちの方はF1.2のレンズでテストをクリアすればもう完璧です・・・と言いたいところですが、D18mmF4を使うならもう少しだけ削る必要がありました。特にドイツ製は約余分に削ります。1mm弱くらい削って様子を見ながら加減して下さい。今回はエレフォトさんのアダプターに限定して、改造方法をレポートしました。他社の製品だと連動ピンがEOSの電気接点に接触したり、アダプターの個体差(後玉がマウント内で収まる位置の差)で、干渉する可能性があります。また、ディスタゴン15mmは後玉付近のフレアカッターが大きな範囲でミラーに干渉し、ミラーを削ったくらいでは対応できませんことをご報告致します。
 5Dにツァイスレンズを装着できると非常に便利です。とにかくフルサイズでの実写テストがフィルムより気軽に早くできることが最大のメリットです。もちろん、フルサイズですから、周辺落ちまでしっかり写り込みます。改造には私も正直、かなりの勇気が要りました。サイト検索しましたが例が無く、コロンブスの卵でした。ちなみに5Dは私の自前品です(汗)。
 カールツァイスさんから、マウント部品の残りも少ないのでレンズのマウントや絞り連動ピンを削らないで欲しいとのメッセージがありました。削ってあるレンズをマウント交換修理に出すと、私が削ったわけではないのに怒られます。今回、限られた資源(レンズ)を大切にして頂きたく、このページを設けました。レンズを削ろうとしている皆さん、ミラーをちょっと削ればレンズを傷めないですみます。削る度胸の無い人はAPS−CサイズのEOSボディを使ってみてはいかがでしょうか。どのレンズでも干渉無く使えます。もう生産されることの無いY/Cマウントのツァイスレンズを末永く大切にして頂けましたら幸いです。

 

  

   

inserted by FC2 system